nakai_npoの日記

思いつきで語るだけです

手を振り返す

大学に入ったばかりの話だ

僕は俗に言う大学デビューをした

髪を染めたとかではなくただ心地いい人間関係を作りたいと思ってたから髪をバッサリ切ったし服も普通にただの無地の服を買った

中学、高校とあまり治安がよろしくないところ出身で中学は普通に窓が割れる音がしたし平成なのに教師も体罰をしてた。

高校は同級生が他校の友達と遊ぶとき橋の下に行ってタバコを吸っていた。僕はビビって肺が弱いからとか適当な嘘をついて吸わなかったが異色で本来来るべきところではないような感じで怖かったが、合わせるために一緒にいた。

大学ではもっと悪いことになると思ったからそういう奴ら以外といたかったから入学式も真面目に受けようとした。あんなに背筋を伸ばしたのは卒業式の練習くらいだったと思う。今思うとなんでするのかよくわかんなかったけど

隣に僕と同じ新入生が座ってきたので話しかけた「やぁ君名前は?何学部?」いきなり話しかけられてびっくりした様子で「あぁ僕はNで(一番頭がいい学部)だよ」「へぇ〜あそこかぁ僕は中井!学部は(あんま頭良くない学部)だよ!一緒の授業受けたらよろしくね」

学部の違いもそうだったけど言葉の節々や仕草でいいところの子なんだろうなぁって感じた

僕は話す内に脚は開き猫背になったがNはずっと姿勢は綺麗だったし言葉遣いも向こうは優しい言葉遣いだったが僕は方言も出るしスラングもよく出た

はっきり言ってNの親が見たら影であんな子と縁を切れとか言われてたと思う。

血統書付きの犬と雑種犬が話してるような感じだった。終始差を感じたがN君は別に何も隔てなく合わせてくれてよかった

そんな感じで入学式だけの関係ではなく授業もいくつか一緒だった哲学と生物、あと歴史学が一緒だった。

昼食も何度か一緒にとりN君は食べる前に「いただきます」と言い食器を返すときちゃんと厨房の人に聞こえる声で「ごちそうさまでした」と行儀がすごくいいなと思い真似をしたら「中井くん声大きいね‥野球部みたいで‥すごい目立ってたよ」と苦笑いされた

哲学の授業のときにNくんのレポートがよかったと評価されていて授業が終わったあとあれ僕が書いたやつなんだと言っていた

ある時、午後の講義が休講になり、帰るとき偶然N君に出会った

「中井君今帰るの?午後の講義は?」

「N君、午後の講義は、あー、サボるわ」と意味のない嘘をついてみた

N君はニマニマしながら

「ホントは休講になったんでしょ、あの教授のもう一個の講義、僕受けててそれが休講になったから今から帰るんだ」

知ってんのかよと心でツッコみながらバス停まで歩いていたら

「中井くん駅まで車で送るよ」とNくんが声をかけてきた。最初は断りつつも結局お言葉に甘えてと言い一緒に車で帰ることにした

N君の車を見たとき僕は違いを知った

小さかったが左ハンドルの車に乗ってたのだ

「すげぇ!外車!?」

「はは‥卒業祝いにお爺ちゃんがくれたんだ」と言って僕は後部座席に乗った(助手席だと降りた後危ないから)

車の中でも他愛のない話をする

「中井くん生物の授業真面目に受けてて教授に覚えられてたね。河豚の肝美味しかった?」「旨かったよ、普通にピリ辛でコーラが欲しくなったよ。Nくんだって哲学の教授に気に入られてんじゃん、僕は物覚え悪いからちゃんと受けないとわかんないんだよ。髄鞘がどうとか河豚毒のテトロドトキシンとか意味不すぎ」

「はは…受けてノートをきっちりとるだけ偉いよ。後ろの方の子なんてケータイ弄ってるんだよ。」

「頭がいいんだろうな、きっと片手間でも覚えられちゃうんだろうね」

「そんなわけないよ他の人のノートのコピーを取ってそれで一夜漬けで挑むだけだと思うよ」

「ふーん」

そんなことを15分も立たずに駅について降りてN君と別れる

「じゃあな」と言って地元の友人に送ってもらったときの癖で中指を立てて離れた、育ちが悪いのが出て焦って、N君の方を見るとあっとした表情で手を振っていたのを見て焦って普通に手を振り返す。その後Nくんは少し笑った様子で少しぎこちなく中指を立て返してきた。

そのまま走り去っていく車の後ろ姿を見て僕は振った手を恥ずかしくポケットに突っ込みそのまま駅に入っていった。

電車を待っている時にLINEだけ送っといった

「金曜日の生物またよろしくね」

週末が少し不安で楽しみだった